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羊と鋼の森

書評、と言ってもこれに関しては自分の感想を忘れない為に書いておくってだけなのでとりあえず本作を読むことをお勧めする。





『羊と鋼の森』
宮下奈都
☆4.5。

3時間ノンストップで小説を読み切ったのなんていつぶりだろうか。
芸術、認識、必然、人間。そういった話。
人生を画角と喩えるならば、画角に収まる一番相応しい形を芸術としよう、と。

一番良い点を挙げろと言われれば、言葉に一切の無駄が無かったところだと思う。


以下ネタバレ。










【書評】
「調律師」という立場から、自分の美的感覚と他人の美的感覚の差異を認識し、主人公は葛藤する。
奏者の力量をそのまま発現させてしまう調律(原義的な音に戻す調律)をする板鳥、丁寧でバランスの取れた調律をする柳、奏者のレベルに合わせて調律をする秋野。

主人公があるべき音に戻す調律(と推測できる)をしていると顧客から担当変更の声が相次ぐことからも、作中で暗に示される芸術(のようなもの)が受け入れられることは決して多くはない、という点が良かった。

五感の輪郭を追って、音と結び合わせる。
終始ストイックに表現される旋律と景色のコントラストが美しかった。
最終的に"自然そのもの"と主人公に捉えられるピアノの旋律に対しての感覚にも共感を覚えた。

なんと言っても恣意性の少ない作品だったと思う。
そしてそれはリアリティーに繋がる。
最初の旋律で「松」を想起した【類稀なる才能】を持つ主人公の旋律師としての上達はトントン拍子に進まない。
旋律師の特徴がいくつか明示され、どれも正解としないし、不正解ともしない。
そういう構成が好きだった。
それは様々な価値観を尊重して重ね合わせた結果だと感じた。
だから誰も蔑ろにされない。


濱野が主人公と会話するシーンで、柳の2つ目の発見を柳に遮られるシーンがある。
結局その後触れられなかったが、2つ目の発見は主人公との出会いなのではないか、と想像した。





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