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彼女の色に届くまで

『彼女の色に届くまで』
似鳥鶏
☆4

個人的に評価の難しい作品である。
少なくとも、読了直後の感情だけで評価をするとすれば☆5であって然るべき作品だとも思う。

かなり記憶に残る作品にはなったかも。
加えて今作は、万人にオススメ出来る作品だとも思ったので粗筋を書いていく。

粗筋
画商の息子である僕は、画家を目指しておりそんな中一人の少女と出会う。
少女といくつかの事件に遭遇し、それを解決していく話。


簡単に言うとこんな感じであろうか。
まぁでも、こんな感じではない。
粗筋というのは難しい。
自分がミステリー好きであると仮定した時に"読む気が失せない程度"の粗筋を書こうとすると、こんな感じになってしまうのだ。

まぁとりあえず読んでみて欲しい。
下にネタバレを含む感想とかを書く。















【ネタバレ含む評価理由、感想】
評価は、感情を線で考えるか点で考えるか、の難しさがある。
今回は線で考えた。線で考えた時、この作品に☆4以上を付けることは難しい。
何故なら、興醒めしたり退屈な場面が多すぎたからである。
それは後述する。

点で考えた時、この作品は無条件で☆5に跳ね上がる。
最終章の高揚感は『向日葵の咲かない夏』や『ラットレース』を彷彿とさせるものがあったからだ。

実際途中まで、☆2~☆3で迷っていたくらいなのだ。



●好きな点
①最終章。これに尽きる。最終章がこれであるならば、不満が無いのだ。それまで抱いてきた不満が許されてしまう。鮮やかである。

②注釈がいちいち面白い。
知的好奇心的な部分でも擽られる部分が多々あった。
あの書き方をする人間性も好きって感じ。

●嫌いな点
①嫌いな構図が採られている。

事件発生→あらゆる可能性の示唆(僕以外の人物が全て発言する。全て間違っている。)→少女が絵を発見して、抽象的な言葉で事件を解決する→僕が分かりやすく説明

この事件発生から事件解決までの流れがテンプレート化されているような構図を小説で使われることが嫌いである。
というかそういう小説を元々好まない。

「作者」と「作品」が切り離せない部分を楽しむのが私にとっての小説であり、展開のテンプレ化はその時点で作品が【作品であるという自覚がある】かのような動きをする。

私たちが普段の生活で、
(世界のために、この交差点を右に曲がるべきだな)
と思案しないように、登場人物は世界観を思案すべきでない、と考える。
実際、思案はしていないのだが、限定性の強い展開をいくつもばら撒かれると読んでいるこちらとしては
(あぁ"作品"なんだな)と幾度も認識させられる。

多分、私はそれが好きじゃないからミステリーが好きじゃないのだと思う。
多くのミステリー小説っていうのは自分の中で、リアリティーとファンタジーの世界を行ったり来たりするのだ。
耐えられない。

本作もその例に漏れない。
構図のテンプレこそがファンタジーであり、それ以外は何故かリアリティーなのだ。
リアリティーで訴えかけていたそれまでの心情描写が無に帰される音が幾度も聞こえた。


②絵という題材を使うのであれば、もっとストイックにして欲しかった。

これはわがままである。
【芸術とは何なのか】というストイックな話が読みたかった。
わがままである。
例えば、一つの絵について100ページくらい考えている、みたいなぶっ飛んだ小説なら私は1秒も退屈せずに読めただろう。

③腐ってもミステリー。
この人がミステリーを書きたかった、というのが分かる。
この人がミステリーを書きたかった、というのが分かるから読後感の良さが長続きしないのだ。
登場人物の心情描写がどれだけ優れていたとしても、ミステリーを書きたかったのだな、という感情が滲み出れば滲み出るほどミステリーという枠に閉じ込められる。

どれだけ純朴な感情であっても、それらは優れたミステリーのために動くものでしかないからだ。
そう錯覚させられる。そう錯覚してしまう。

そうでないというのなら、そこに4つもミステリーは私の中では必要無いのだどうしても。

嫌な考え方だと思う。

本作を作るにあたっての作者の思考手順が
【ミステリー→心情描写】
と確信してしまうだけで、私は登場人物の心情に対して真摯でいられなくなるのだから。






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