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箸休め

【罪の併存】
「人殺しは悪いことかい?」
「悪いことだ。」
「僕は人殺しは悪いことではないと思っているから、君は僕を殺した方が良いのでは?」
「ボクは人殺しが悪いことだと思っているから君を殺さない。」
「そうすると僕は人殺しが悪いことだと思っている人達にとって悪い人間なのに殺されない。ならば君は人殺しが悪いことと言ってこの世界をどうしたい?」
「人殺しが悪いことだと思っていない人の心が変わって欲しいと思っている。」
「人殺しが悪いと思っていない人間が人殺しをしなくても?」
「そうだ。」
「なるほど。じゃあ人殺しをせずに人殺しが悪いと思っている人間と、人殺しをせずに人殺しが悪いと思っていない人間の違いは何?」
「人殺しが悪いと思っていない人間且つ、人殺しをしてしまう人間の行動を変えられるかどうかだ。」
「なるほど。じゃあ僕は今日から人殺しを悪いことだと世界中に説いて回ることにした。こうした場合、君と僕との違いは何?」
「心で本当に思っているかどうかだ。それに人殺しを悪いと思っていない人間がわざわざ世界中に自分の考えと逆のことを説いて回ることはないだろう。」
「その通り。僕は人殺しが悪いことだと説いて回ることはない。だから君の言う通り、君は誰かが人を殺すことを防いでいるかもしれない。なのに僕は誰の人殺しも防ぐことは無いんだ。そして君の説が通るなら、僕は人を殺す可能性が無かった人間が人を殺すようになることを助長しているかもしれない。それでも君は僕を殺したくならないかい?」
「・・・」
「君が人殺しが罪だと思っている感覚と同じように、君が僕を殺さないことは罪であるべきなのではないか?」



【空気的な自由】
「君は監禁されることが不自由だと言う。僕は監禁されることも自由だと言う。監禁されることを不自由だとした時、監禁する人間は不自由になる。監禁されることを自由としなければ、自由を語る術が無くなると思ってるからだ。」
「語られるべき自由と語られないべき自由の話だ。監禁されることや監禁することを自由とするならば、きっと人殺しも自由なのだろう。その自由は語られる意味が無い。我々が呼吸をすることを語る意味が無いように。」
「そうだ。しかし、呼吸という行為が、二酸化炭素を吸い込んで酸素を吐き出す行為だという考えが蔓延していたら是正する必要があるだろう。」
「なるほど。じゃあ君が自由を主張するのは事実が曲がって伝わるのが嫌だからか?」
「そうだよ。だって、僕の主張する自由は森羅万象を森羅万象と名付けているのと同じだから、僕の自由が共有されたところで世界は変わらない。監禁するのが自由か、不自由かに問わず、監禁は起こるからね。」
「そうなると今度は君の行動原理が分からない。何のためにそんなことをするんだ?」
「一つの言葉が二つの意味で錯綜するコミュニケーションが不全だからってだけだよ。成立していない会話が続くのは地獄じゃないか?」



【その理由は?】
「どうして彼女を殺した?自治会で話した時も凄く良い人だったのに…」
「良い人だと殺されないのは何故ですか?」
「良い人は危害を加えないだろう。」
「危害を加えない人間が殺されないなら危害を加えている僕が生きていて彼女が死んでいるのはおかしくないですか?」
「それはお前が彼女を殺したからだろうが!」
「そうなんですけど、僕はあなたの理屈が僕に当て嵌まらないと言いたいだけなんですよ。」
「じゃあ何故彼女を殺した?」
「そうですね…確かその日、鍵を閉め忘れた気がして駅へ向かう途中に一旦引き返したんですよ。そしたらちゃんと閉まってて。なんだぁと思ったら彼女の顔が思い浮かんだんですよね。」
「それでわざわざ彼女の家の前で待ち伏せして殺したのか?」
「そうです。」
「理由は?」
「さっき話したじゃないですか。」
「いや、話してない。殺すのが彼女でならなければならなかった理由はなんだ?無駄に引き返してイライラしてたのか?」
「イライラはしてなかったですよ。むしろちゃんと閉めてた~と思って安心してました。彼女でなければならなかった理由は話しましたよ。その時に彼女の顔が思い浮かんだって。人の話聞いてます?」
「いや、だから彼女の顔が思い浮かんでどうしてそれが殺意に至るんだ。」
「質問の意味が分かりません。殺したいと思ったからに決まってるじゃないですか。」
「だからどうして殺したいと思ったのか聞いてるんだ。」
「それってどうして僕が梅干しが嫌いなのかって質問と同じですよね?そんなの知りませんよ。」





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